中国人「日本で草サッカーをしてみた」──その体験が映す日本のアマチュアサッカー文化

中国版Instagramとも呼ばれるSNS「小紅書(RED)」で、「日本で草サッカーをしてみた」という投稿が話題になった。投稿した中国人男性は、日本滞在中に十数試合の草サッカーに参加したといい、その多くは5人制サッカーだったという。彼が日本の草サッカーで感じた「ルールの徹底」「マナーの良さ」「トラブルの少なさ」は、多くの中国人ユーザーの共感を呼び、「日本はアマチュアサッカーが発展している」「中国と違ってケンカにならない」といったコメントが続いた。

日本の草サッカーは「参加しやすい」ことが特徴

投稿者によると、日本では草サッカーに参加するための入口が非常に多いという。たとえば、都心のレンタルフットサルコートでは、個人で申し込めば知らない人同士でチームを作って試合ができる「個人参加」が一般的だ。平日の夜19時から21時、週末の午前や午後など、時間帯も細かく分かれているため、会社員でも仕事終わりに参加しやすい。

また、日本の草サッカーは5人制、7人制、11人制など形式が豊富だ。初心者向けの「エンジョイクラス」、経験者向けの「コンペティションクラス」、40代以上向けの「マスターズクラス」など、レベルや年齢に合わせたチームも多い。そのため、「久しぶりに運動したい人」も「本気で勝ちたい人」も、それぞれ自分に合った環境を選べる。これが、草サッカーが日本で広く定着している大きな理由だ。

時間厳守とマナーが当たり前の文化

投稿者が特に驚いたのは、参加者の時間厳守とマナーの良さだったという。日本の草サッカーでは、開始15分前には集合し、ユニフォーム、スパイク、飲み物、タオルなどを各自で準備するのが一般的だ。試合後には相手チームと握手や挨拶をし、利用したコートの周りをごみ一つ残さず片付ける。

たとえば、試合中に相手を倒してしまった場合、日本ではすぐに「大丈夫ですか?」と声をかけ、手を差し出して起こす光景がよく見られる。ファウルをした側が謝り、受けた側も「大丈夫です」と短く返して試合を再開する。こうした小さなやり取りの積み重ねが、参加者同士の信頼につながり、トラブルを減らしている。

「ケンカにならない」理由はルールと空気づくり

コメント欄で特に注目されたのは、「中国と違ってケンカにならない」という意見だ。草サッカーでは、接触プレー、ファウルの有無、得点の判定などをめぐって感情が高ぶることがある。しかし日本では、多くのチームが「試合を続けること」「全員が楽しむこと」を優先する傾向がある。

理由の一つは、主催者や審判がルールを明確にしていることだ。多くの草サッカー大会では、危険なタックルの禁止、侮辱的な言葉の禁止、退場後の再入場の制限などが事前に説明される。さらに、参加者自身も「勝ちたい気持ちはあっても、暴力や口論は場を壊す」という共通認識を持っている。つまり、日本の草サッカーが穏やかなのは気質だけではなく、ルール、運営、マナーが組み合わさった結果だといえる。

日本のアマチュアサッカーを支えるインフラ

日本の草サッカーが発展している背景には、施設の充実がある。都市部では、屋内フットサルコート、人工芝の屋外コート、学校施設や公園のグラウンドなどが各地に整備されている。たとえば東京都内では、1時間あたり数千円から利用できるフットサル施設が多数あり、夜間照明付きのコートも多いため、冬でも参加しやすい。

さらに、日本サッカー協会や地域の都道府県サッカー協会は、指導者育成や競技環境の整備を長年進めてきた。研究では、日本の草の根サッカーの成功要因として、都道府県サッカー協会の運営体制や指導者教育の充実が挙げられている。 こうした土台があるからこそ、子どもから大人まで、幅広い世代がサッカーを続けやすい環境ができている。

「楽しむこと」がサッカーを長く続けさせる

日本の草サッカーの魅力は、勝ち負けだけを追わない点にある。30代、40代、50代の参加者の中には、「健康のために週1回ボールを蹴りたい」「昔の仲間と再会したい」「新しい友達を作りたい」という人も多い。試合後には近くの飲食店で食事や交流をするチームもあり、サッカーが人と人をつなぐコミュニティになっている。

たとえば、ある社会人チームでは、会社員、教師、エンジニア、自営業者など異なる職業の人たちが毎週集まり、試合後に今後の予定や生活の話をするという。こうした交流があるため、たとえ試合で負けても「また来週参加しよう」と思える。草サッカーが続けられるのは、技術の高さよりも、この「また来たい」と思える空気があるからだ。

中国のサッカー文化に向けた示唆

この投稿が中国で大きな反響を呼んだのは、日本の草サッカーが示す「サッカーを楽しむための社会環境」に、多くの人が関心を持ったからだ。中国でもサッカー人気は高いが、草サッカーの普及には、コート不足、参加情報のばらつき、トラブル時の対応など、課題があると指摘する声が多い。

日本の事例から学べる点は明確だ。まず、誰でも気軽に使えるコートを増やすこと。次に、初心者でも参加しやすいリーグや個人募集の仕組みをつくること。そして、暴力や侮辱を許さないルールと、挨拶・謝罪・片付けといった基本的なマナーを浸透させることだ。サッカーの発展は、プロ選手の育成だけでは完成しない。大人が週末に楽しくボールを蹴り、また来週も参加したくなる社会こそが、サッカー文化を強くする。